【歴代BMW名車】記憶に残るモデルを紹介

元々航空機エンジンを製造していたBMWは、戦後にその技術を生かし、四輪車・二輪車産業へと進出していきました。

高性能なエンジンと、その性能を最大限に発揮する車体や足回り。そして唯一無二のデザインや技術。妥協を許さない車作りを続けることで、徐々に世界的に評価されるメーカーへと成長していきました。

BMWの歴史を語る上で、これまで登場してきた「名車」の存在が欠かせません。現行モデルも間違いなく「名車」のDNAを引き継いでいます。

そこで本記事では、これまでにBMWから登場した「名車」をいくつかピックアップしてご紹介していきます。

 

現代のBMWのルーツとも言える「クラシックモデル」

第二次世界大戦中のBMWは、軍用車や戦闘機のエンジンを製作していましたが、やがて戦争が終わると、本格的に自動車作りへと進出し始めます。

また、「ノイエ・クラッセ(ドイツ語で「ニュー・クラス」の意味)」と呼ばれるモデルが次々に投入された1960年代は、BMWの成長が著しい時代でもあります。

この年代に登場したモデルは、日常的な使い勝手はもちろん、スポーツ性能を合わせ持った高性能なモデルとして、世の中を驚かせました。

まずはBMWの登場間もない1900年代初期〜中期にかけて登場した「クラシックモデル」を見ていきましょう。

BMW 328(1938年)

1938年に登場した「BMW 328」は、いかにもクラシックなスポーツカーとも言える流麗なデザインのボディを持つモデル。現代では「第二次世界大戦前の最高傑作」とも言われています。

フロントに搭載する2L直列6気筒エンジンは80馬力を出力し、最高速度は150km/hを記録。ル・マン24時間耐久レースやミッレミリア、タルガフローリオなどと言った名だたるレースで数々の栄光を勝ち取りました。

しかし、翌年の1938年以降にヨーロッパ全土に戦争の影響が広まると、BMWは軍需に向けた生産方針へと転換するようになります。

結果的に「BMW 328」はわずか462台しか生産されず、幻のモデルとなってしまいました。

BMW 501(1951年)

第二次世界大戦が終結すると、BMWは四輪・二輪事業へと本格的に進み始めます。

戦後6年が経過した1951年には、戦前にBMWが投入した大型乗用車「BMW 326」をベースにした「BMW 501」を発表。

「BMW 501」は、4ドアセダンや2ドアクーペ、カブリオレなどの様々なボディタイプのモデルが設定されていました。

また、登場時に搭載していたエンジンは「BMW 326」と同じ2L直列6気筒でしたが、後に大型化したボディに見合ったV型8気筒エンジンが搭載されるようになりました。

すると戦後の西ドイツで初めてV型8気筒エンジンを搭載したモデルとして話題になり「BMW=高性能なエンジンメーカー」というイメージを世に浸透させていきます。

BMW イセッタ(1955年)

これまでのBMWは、どちらかというと高級大型車を中心に展開をしていましたが、決して売れ行きが好調であるとは言えませんでした。

戦後の復興期でもあったドイツ国民の経済状況は苦しく、人々は高級車を手に入れるための金銭的余裕が無かったのです。

そこでBMWは、イタリアの「イソ社」から販売されているマイクロカー「イソ・イセッタ」のライセンス提供を受け、「BMW イセッタ」の生産を始めます。

「BMW イセッタ」は、前方に配置されたドアと後輪が1輪という斬新な車体設計。BMWの二輪車「R-25」のエンジンを搭載し、パワーも信頼性も優れたマイクロカーとして世に出されました。

すると当時の大衆車であった「VW ビートル」よりも安価で手に入れやすく、女性でも気軽に乗れる使いやすさから、瞬く間に大ヒット車へと成り上がります。

最終的にシリーズ総計16万台を売り上げ、経営難の窮地に立たされるBMWを救う救世主となったのです。

BMW 1500/1600(1962年)

先ほどご紹介した「BMW イセッタ」の大躍進のおかげで経営難を免れたBMWですが、本格的に軌道に乗り始めたのは、ミドルクラスセダンへの進出がきっかけと言われています。

その源流となったのが、1962年に発売された「BMW 1500」です。

「ノイエ・クラッセ」と呼ばれるミドルクラスセダンの「BMW 1500」は、シャシーやエンジン、足回りが新設計され、加速やハンドリングが非常に優れていました。

垂直キドニーグリルと円形のヘッドライトを持つ特徴的なフロントマスクは、現在のBMWにも通ずるところがあります。

「BMW 1500」は年間約2万台もの生産台数を記録する人気車へと成長し、世の中に「BMW=スポーツセダン」というイメージを根付かせていきました。

BMW 2002(1966年)

1966年に発売された「BMW 2002」は、「BMW 1600」の発展型モデルとして登場しました。日本では「マルニ(02)」の愛称で親しまれていました。

「BMW 2002」は、2ドアクーペ仕様の「BMW 1600-2」をベースに、2L直列4気筒エンジン(最高出力100馬力)とバランス性能に優れたサスペンションを搭載。

短いホイールベースを活かした俊敏なコーナリング性能から、当時のラリーやサーキットトラックレースで活躍していました。

また、ツインキャブレターや機械式インジェクション、世界初のターボチャージャーの搭載など、当時のBMWの最新技術が惜しげもなく投入されたモデルでもありました。

BMW 3.0 CSL(1971年)

1971年に登場した「BMW 3.0 CSL」は、「世界一美しいクーペ」と称される「BMW 3.0 CS」の軽量モデル。

一切の無駄を削ぎ落とした美しいボディは、今尚多くの車好きを魅了しています。

ボンネットやドア、トランクフードにはアルミ合金が用いられ、ウインドウもガラスからアクリルに変更。約200kgもの軽量化に成功しています。

また、心臓部には「シルキーシックスエンジン」と呼ばれる直列6気筒エンジンと、5速MTを搭載しています。

「BMW 3.0 CSL」をベースに開発されたレーシングカーは、スパ・フランコルシャン24時間耐久レースや、ヨーロッパのツーリングカー選手権のタイトルを獲得しています。

 

現在のBMWのイメージを世に浸透させた80〜90年代の名車

ここからは、少し時代が進んだ1980〜90年代の名車をご紹介していきます。

縦長のキドニーグリルや、円形のヘッドライトなどの初期からある基本デザインは継承されていますが、リトラクタブル式のヘッドライトが採用された個性的なモデルもございます。

E21/E30/E36/E46型 3シリーズ

ライトウェイトセダンに位置付けられる3シリーズは、登場初期からBMWを代表するモデルです。

1975年に登場した初代E21型は、「BMW 2002」から、さらにシンプルで洗練された見た目に仕上がっています。

後に直列6気筒エンジンを搭載したモデルもラインナップに追加されると、徐々にラグジュアリーモデルへとイメージを変えていきます。

2代目のE30型は、現代まで続いている3シリーズの礎を築いたモデルといっても過言ではありません。

4灯ヘッドライトが標準化されたり、BMW初のフルタイム4WDが搭載されたりと、随所にBMWらしいデザインや技術が投入されています。

また、セダンだけでなく、カブリオレやステーションワゴンもラインナップに加わり、幅広いユーザーに応えられるようになりました。

ちなみにE30型が日本に導入された1982年の日本は、バブル期の真っ只中。当時は六本木の至る所でE30型が走っていたため、当時最も売れていた「カローラ」になぞらえて「六本木のカローラ」と呼ばれていました。

1990年に登場した3代目のE36型は、これまでのセダン思考のデザインから一転、クーペ志向へとモデリングされて登場しました。

直列6気筒のエンジンは全てDOHC化され、より気持ち良く高回転まで回る仕様へと進化しています。

1998年に登場した4代目のE46型は、基本性能はそのままに、これまでのモデルよりも一回り大きい3ナンバーサイズに変更。

直4エンジンを搭載するモデルには、世界で初めてバルブトロニックを採用し、世界中のメーカーに影響を与えることになりました。

また、スポーツ性能だけでなく、燃費性能も視野に入れて開発されているのもポイントです。

M535i(E28型 5シリーズ)

ミドルサイズの高級サルーンに位置付けられる5シリーズ。

1980年に登場したE28型「M535i」は、BMWのモータースポーツ部門担当の「M社」が手がけたモデルです。

「ビッグシックス」と呼ばれる直列6気筒エンジンやスポーツサスペンション、レカロシートの採用など、本格的なスポーツ性能を備えており、その性能の高さから「羊の皮を被った狼」と呼ばれていました。

生産台数が少ない希少車ではありますが、後に登場する「M5」へと続く重要なモデルであるのは間違いありません。

635CSi (E24型 6シリーズ)

1978年に登場した「635CSi」は、「最も美しいクーペ」と呼ばれるE24型6シリーズのハイパフォーマンスモデルです。

心臓部には「BMW M1」と同じ3.5L直列6気筒エンジンが搭載され、ロングホイールベースでどっしりとした佇まいと、「シルキークルーズ」と称される余裕のある走りが特徴です。

また、「635CSi」は、1986年に放送されたアメリカのコメディドラマ「こちらブルームーン探偵社」の主人公「マディ」の愛車にもなっています。

シャープなフロントマスクと、ワイドボディを持つ本モデルの魅力は、今も色褪せることがありません。

850CSi(E31型 8シリーズ)

1994年に発売された「850CSi」は、当時のBMWのフラッグシップGTとして登場しました。

当時の「スーパーカー」と呼ばれるモデルの多くはリトラクタブル式ヘッドライトを採用しており、「850CSi」も流行に乗っ取ったデザインが採用されています。

登場初期は、圧倒的なパワーを誇るV型12気筒エンジンを搭載していましたが、後にコンパクトなV8エンジンを搭載した「840Ci」もラインナップに追加されています。

 

歴史に残る伝説モデルが勢揃い!Mモデル

BMWのレース部門を担当する「M社」が開発するMモデル。

50年以上もの間BMWのスポーツモデルに関わり、これまで数々のレースで輝かしい成績を収めてきました。

言うまでもなくMモデルには、伝説的な名車が勢揃いしています。BMW好きなら一度はどこかで聞いたことがあるかもしれません。

M1

1978年に登場した「M1」は、現在のMシリーズのルーツとも言えるモデル。当時の最大のライバルであったポルシェに勝利するべく「グループ4」カテゴリーのホモロゲーション獲得に向けて作られました。

BMW初のミッドシップレイアウトモデルでもありますが、実は本格的なミッドシップスポーツカーの開発自体が初めてで、開発は難航を極めました。

車体設計を任せたメーカーとの共同開発がうまくいかず、当初の計画よりも販売価格が大幅に高騰。残念ながら市場ではほとんど流通することがありませんでした。

開発期間も大幅に延長してしまったため、当初「M1」が参戦する予定だった「グループ4」は終了してしまいます。

しかし、活躍する機会が限られている中、1979年のシリーズではニキ・ラウダがチャンピオンの栄光を勝ち取ると、翌1980年にはネルソン・ピケが2代目チャンピオンに輝きます。

「不運のスーパーカー」として語られることが多いですが、後のF1参戦やMモデルの開発・発展に好影響を与えた伝説的なモデルであるのは間違いありません。

M3(E30/E36型)

1986年に登場した「E30型M3」は、3シリーズの2ドアセダンをベースに開発されたモデルです。

ツーリングカー選手権の「グループA」カテゴリーで勝利することを目的に開発されており、高さのあるトランクリッドやリアスポイラー、フロントからリアにかけてのアンダースポイラーなど、空力を考慮されたボディが特徴となっています。

歴代M3の中で唯一直列4気筒エンジンを搭載したモデルで、軽さを活かした車体設計のおかげで、ラリーでも活躍していました。

1993年に導入された「E36型M3」は、エアロパーツを身に纏ったE30型から一変、落ち着いた印象のデザインに変更されます。

心臓部には「シルキーシックス」と呼ばれる直列6気筒エンジンも搭載されていました。

M ロードスター

「M ロードスター」は、日本人のBMWエクステリアデザイナーである永島氏がデザインした「E36型Z3」をベースに、M社が手解きを加えた特別なMシリーズです。

通常の「Z3」にはコンパクトな直列4気筒エンジンが搭載されていますが、本モデルは当時の「M3」に搭載されている3.2L直列6気筒エンジンと5速MTを搭載。

見た目は「Z3」と大差がありませんが、一度アクセルを踏み込むと、軽々と車体を押し進める力を秘めています。

また、オーバースペックとも言えるエンジンを活かすために、足回りやボディも強化されています。「駆けぬける歓び」を肌で感じられる一台だと言えるでしょう。

M5(E60型)

2003年に登場した「E60型M5」は、BMWで唯一V10エンジンを搭載するアグレッシブなモデル。

2000年代前半のF1と言えばV10エンジンが主流で、BMWもウィリアムズにエンジンを供給するかたちで参戦していました。

そしてF1の技術をフィードバックして生まれたのが、V型10気筒エンジンを搭載したE60型M5です。

一見すると通常の5シリーズのような落ち着いたデザインをしていますが、フロントスポイラーやMスポイラーが装備され、洗練されたスポーツカーのような雰囲気も醸し出しています。

後にも先にも自然吸気のV10エンジンを搭載したモデルはこのE60型M5だけ。Mモデルの歴史を語る上で欠かすことのできないモデルだと言えるでしょう。

 

まとめ

航空機エンジンの製造から始まったBMWは、第二次世界大戦や石油危機、経営状況の悪化など、これまで数多くの困難に直面してきました。

厳しい時代でありながら、愚直に世に認められる車作りを続けたからこそ、今のBMWがあると言えます。

今回ご紹介した名車達は、どれもBMWの歴史を語る上で欠かすことのできないものばかり。もちろん今回ご紹介しきれなかった「名車」も沢山ございます。

現在販売されているモデルも、これまでの「名車」が培ってきたイメージや伝統を受け継ぎながら、新たな歴史を作り続けています。

現行のBMWの各モデルは、Shonan/Toto BMWのショールームにも展示しております。ぜひお気軽にご来店ください。

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ライター情報

BMW Column編集部

BMW Column編集部です。 このコラムでは、車にまつわる情報、BMWに関する面白くてタメになる知識を発信していきます。ぜひ更新を楽しみにしていてください♪